大腸ポリープとは
ポリープとは、腸の粘膜から突出する腫瘍(しゅよう)の総称です。大腸にできるポリープは、胃でできるポリープとは逆にほとんどが腫瘍性のもので、大きくなると癌に置き換わる(adenoma - carcinoma sequence)といわれています。また小さくてもがんの成分を含むものや、最初から癌として発生するもの(de novo癌)もあります。大腸ポリープは40代から増えはじめ、年齢が上がるほどでできやすくなります。自覚症状がないため気づかない人が多いのですが、60歳代になると2人に1人がポリープを持っているとも言われます。
ポリープとポリポーシス
大腸をはじめ、小腸や胃などに100個以上生じたポリープを”消化管ポリポーシス”といい、ポリープとは区別して扱います。その多くは遺伝性の病気で、そのうちの家族性大腸ポリポーシスなどは、若年層でも発症し高率でがん化するため、ご家族で本疾病をお持ちの方がいらっしゃる場合には是非ご相談ください。
大腸ポリープの種類
大腸ポリープは、性質の違いから「通常型腺腫」「鋸歯状ポリープ」などの腫瘍性ポリープと「過誤腫性」「炎症性」などの非腫瘍性ポリープに分けられます。また、その形状の違いから分類すると「有茎性」「無茎性」などがあり、大きさも5mm以下の小さなものから3cmを越えるものまで様々です。
性質の違いによる分類
1)腺腫性ポリープ
大腸の粘膜は、絨毛(じゅうもう)という細かな凸凹で覆われています。そのくぼみの中にある、腸液を分泌する腺組織の表面にできたものが腺腫性ポリープです。大腸ポリープの中で最も多いのがこの腺腫性ポリープで、全体の80%を占めます。10mm以上のポリープは10%がすでにがん化しているという報告もありますので、積極的に大腸カメラで切除をしています。腺腫性ポリープは、その形態によってさらに次の3つに分類されます。
腺管腺腫
腺管の形態を保ったポリープで、腺腫ポリープの80%がこのタイプです。
絨毛腺腫
絨毛の形態を保ったポリープで、その発生頻度は20%程です。
しかし、腺腫性ポリープのなかで最もがん化しやすいタイプです。
腺管絨毛腺腫
腺管腺腫と絨毛腺腫が混合したもの、発生頻度は1〜2%
2)鋸歯状ポリープ
腺管が鋸歯状の管腔構造を呈する病変を総称して鋸歯状ポリープといいます。従来がん化の危険性のない非腫瘍性の病変と考えられてきましたが、近年これらの一部のポリープからがんが発生すること(serrated pathway)がわかってきました。下の図は鋸歯状病変の中の、sessile serrated adenoma and polyp(SSA/P)といわれる種類のポリープです。右側の大腸にできやすく、周囲と同程度からやや褪色した色調の比較的平坦なポリープになります。
形状の違いによる分類
1)隆起型
きのこ状や半球状に突出しているもの。
2)表面型
低く平らに広がったもの。
3)陥凹型
中心にくぼみがあるもの。
がんの可能性が高い。
大腸ポリープの検査と治療
ポリープが発見され、それが腫瘍性のポリープであった場合は、その形や表面の性状などを調べ治療方針をきめます。腫瘍性ポリープであれば、内視鏡スコープの先につけた器具で切除(内視鏡的大腸ポリープ切除術)しますが、ポリープの種類や大きさによって切除方法は違います。
切除しても痛みはなく、大腸カメラ検査は20分で終わり、そのまま帰宅できることができます。内視鏡的大腸ポリープ切除術については動画をご参照ください。
日帰りでの大腸ポリープ切除について
以前は入院での大腸ポリープ切除が主流でしたが、近年では身体への負担が少なく、安全に施行できるようになり、クリニックにて日帰りでのポリープ切除も可能となりました。また、日帰りでのポリープ切除のため何度も医療機関を受診する必要がなくなりますので、医療費の削減や受診のために拘束される時間も短縮できるメリットがあります。
当院では、大腸ポリープを切除する際の方法として、ポリープ切除後の出血が少なく安全な「コールドスネアポリペクトミー」を実施しています。コールドスネアポリペクトミーとは、大腸カメラ検査時に内視鏡スコープの先端から金属ワイヤーを大腸ポリープにかけて切除する方法です。コールドスネアポリペクトミーでは高周波電流による通電を行わないため、ポリープ切除後の出血が少なく、腸管穿孔の危険性もまずありません。
最後に
大腸ポリープを切除することは、大腸がんの予防になります。そのための大腸カメラ検査は是非受けていただきたい検査ですが、大腸カメラ検査に対しての不安から、敬遠される現状もありますので、この情報が少しでも皆様の大腸カメラ受診率向上に繋がればと思っております。
大腸がんは定期的に大腸カメラ検査を受診し、大腸ポリープ切除を実施していくことで予防できる時代となりました。大腸がんは40歳を過ぎたころから発症率が高まると言われています。40歳を過ぎた方で大腸カメラ検査を受けたことがない方、親族で大腸がんと指摘を受けた・治療を受けていた方がいらっしゃる方は、是非一度大腸カメラ検査を受けていただければと思います。